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小説/果肉の色 第1話

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私という境界線が曖昧になっていく。もう、これでもかというくらい私は私という存在をネットワークに放ち続けてきた。でも今は誰もがしていることだ。気にもならない。息を吸うよう。ランチの時には、食べるものすべてを写真でシェア。休日のお出かけも、夜の泣き言もメッセージでシェア。シェアさえすれば、寂しさは埋められる。もう孤独になることの方が難しい日々。秘密の話さえも電波に乗せて、こっそりとシェア。私の本体は電波の中にあるような気がしてくる。でももう誰もが同じだ。綺麗なもの、美味しいもの、美談。そして、愛。価値あるものはすべてネットワークの向こう側。

ではこちら側にいる私は何者なんだろう?日常を華やかに見せるためだけの、血の滲むような努力。努力がもはや苦にならないレベル。努力していないことの方が、苦になる。なぜなら、何もしなければただ朽ちていくだけだから。盛りを失った花にはなりたくなかった。いつまでも華やかなピクセルで彩られた、画面の中で笑っていたかった。今日もずっとログインしている人気のSNS。もうずっとオンラインの私。このまま、画面を見つめたまま眠ってしまいそうだ。それもよくあること。眼に映る光は眩しいのに、まぶたが重たくなる。このまま、ネットワークに私ごと飲み込まれ、光の中に溶け込んでしまいそうになる。溶け込んでしまいたい。夢と、憧れと、見栄が混ざり合った世界。朽ちることのない暖かな世界。ひとりきりのベッドの中は暖かいけれど、このまま画面の向こうへ連れ去って欲しくなる。

まどろんでいるところで、メッセージが飛び込んできた。「Ayami 起きてる?」

つづく

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